譲渡所得税軽減に活用できる「事業用資産の買換え特例」とは

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前回の記事では、不動産を売却して利益を得た際にかかる税金=「譲渡所得税」について解説いたしました。

 
本記事では、譲渡所得税を軽減できる控除制度の1つである「事業用資産の買換え特例」について解説いたします。

 

事業用資産の買換え特例とは

同制度は個人が事業用資産の不動産を買い替えた場合、譲渡収入のうち買い換えた金額のおよそ8割については課税せず、その残りだけが税金の対象になるというものです。

譲渡した資産の一部にしか課税が生じないので節税となります。
 

この特例を受けるには、売却する不動産および買い換える不動産が事業用である必要があります。

 

制度要件

主な要件は以下の通りです。

  • 譲渡資産および買い換える資産は事業用である
  • 買い換えた資産は購入から1年以内に事業用にする
  • 買い換え資産は譲渡資産売却の翌年前に購入する
  • 買い換えの資産が土地の場合は、売る土地の面積の5倍以内
  • 譲渡資産と買い換え資産が一定の組み合わせに該当する

 
買い換えなので、譲渡資産と同じく一定期間内までに事業用にする必要があります。
 

購入のタイミングも期限があるので注意しましょう。

譲渡資産売却の前年に買い換えの資産を購入した場合は、取得した年の翌年3月15日までに「先行取得資産に係る買換えの特例の適用に関する届出書」を税務署に提出します。

一方、譲渡資産売却の翌年に購入する場合は、「買換資産の明細書」を提出する必要があります。
 

買い換え資産が土地の場合は、購入する土地面積が、譲渡した土地面積の5倍以内でなければなりません。

面積を超える部分については、特例の対象外となります。
 

譲渡資産と買い換え資産は組み合わせが決まっていて、各種あります。

ただし、大半の組み合わせは、一般の方には関係のないものです。
 

代表的な組み合わせとして、

  • 譲渡資産…売った年の1月1日において所有期間が10年を超えている国内の事業用不動産
  • 買い換え資産…国内にある不動産または構築物(土地の場合は原則建物の敷地で300㎡以上)

があります。

 

控除額

控除額は譲渡価格(譲渡収入額)と買い換え価格の大小で異なります
 

(1)「譲渡収入額<買い換え価格」の場合

 
買い換えの価格が上回る場合は、

    譲渡収入額×20%−(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×20%=譲渡所得

となります。

取得費1,500万円、譲渡費用300万円の譲渡資産を6,000万円で売却し、賃貸用不動産を6,000万円以上で買い換えたとすると、
6,000×0.2−(1,500+300)×20%=840万円が譲渡所得となります。

繰り延べられる譲渡益は通常のものより80%になるので、その部分が将来に繰り越されて20%部分にのみ税金がかかることになります。
 

なお、20%の値は

  • 大都市等以外の地域から大都市等への買い換えの場合 …25%
  • 大都市等以外の地域から特定地域(東京23区)への買い換えの場合 …30%

とそれぞれ条件によって変動します。

 

(2)「譲渡収入額>買い換え価格」の場合

 

    譲渡収入額−(買い換え価格×80%)−(譲渡資産の取得費+譲渡費用)×{譲渡収入額−(買い換え価格×80%)}/譲渡収入額=譲渡所得

取得費1.500万円、譲渡費用300万円の譲渡資産を6,000万円で売却し、賃貸用不動産を5,000万円で買い換えたとすると、
6,000−(5,000×0.8)−(1,500+300)×{6,000−(5,000×0.8)}/6,000=1,400となり、
譲渡所得は1,400万円となります。
 

80%の値は

  • 大都市等以外の地域から大都市等への買い換えの場合 …75%
  • 大都市等以外の地域から特定地域(東京23区)への買い換えの場合 …70%

とこちらも条件によって数値が変わります。

 

まとめ

事業用資産の買い換え特例の活用で高額の節税が可能となりますが、要件が少し複雑な点に注意です。

また、活用前に必ず実際の節税額をシミュレーションした方が良いでしょう。
 

その際は土地活用に強い専門の税理士に相談することをお勧めいたします。

制度の手続きも合わせて依頼すれば、確実に節税を実行することができます。

 


 

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この記事を書いた人

大学卒業後、不動産会社で4年ほど実務を経験。
その後、会計事務所に勤務しながら税理士資格を取得し、不動産業界での経験を活かして不動産会社や不動産投資家の税務サポートに従事。