不動産による相続税対策⑥住宅取得等資金の贈与の利用

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前回は、不動産の相続税対策に有効な方法として「おしどり贈与」の活用を紹介いたしました。

 

不動産に関する生前贈与の特例制度としては、他にも「住宅取得等資金の贈与制度」があります。

おしどり贈与では夫婦間の贈与が前提でしたが、この制度では両親や祖父母といった直系尊属からの贈与に適用できます。

 

住宅取得等資金の贈与の概要

同制度は両親や祖父母といった直系尊属からマイホームの購入費用を贈与すると、最大3,000万円まで無税にできる制度です。
 

契約日や住宅の種類、家屋にかかる消費税の税率等によって無税にできる金額は変動します。

贈与金の用途は、新規の住宅購入・建築に限定されるので、購入済の住宅ローン返済に充てることはできません。

 

対象者

贈与者および受贈者は、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 贈与者は受贈者の直系尊属である(両親と子供、祖父母と孫の関係)
  • 受贈者は贈与された年の1月1日時点で20歳以上
  • 贈与があった年の受贈者の合計所得額が2,000万円以下
  • 贈与金については翌年3月15日までに使うこと

 
贈与金については使用期限が設定されているので、注意が必要です。

 

対象となる建物

費用は物件の購入や改築のためのものであり、家具等の購入には使用できません。
 

(1)購入や新築物件

 

  • 建物が国内にある
  • 登記簿上の床面積が50m2〜240m2
  • 床面積の50%以上が居住用として使われる
  • 贈与された翌年3月15日までに住む(確実に見込まれる場合も可)

 

(2)中古物件

 

  • 建築後に使用されたことがない
  • 鉄骨造、鉄筋コンクリート等の耐火建築物の場合築25年以内、木造は築20年以内であること
  • 耐震基準を満たす(証明書類必須)
  • 耐震基準を満たさない場合は、贈与の翌年3月15日までに耐震改修工事を実施し、基準をクリアすれば可

 

(3)増改築の場合

 

  • 国内にある住宅
  • 増改築後の登記簿上の床面積が50㎡〜240㎡以下
  • 床面積の50%以上が居住用
  • 増改築費用が100万円以上(金額の半分が住居部分の工事費)
  • 増改築は自身が所有して居住する物件について行われる
  • 工事内容の証明書類が必須

 

制度の特徴

  • 最大3,000万円まで贈与税を無税にできる
  • 暦年贈与と併用できる
  • 相続開始前3年以内の贈与加算はなし

 

(1)最大3,000万円まで贈与税を無税にできる

 
消費税率や契約の締結日、家屋の種類等によって非課税額が変わります。

また、契約締結日は、贈与契約の日ではなく、住宅購入や改築で業者と交わした契約の日となります。
 

省エネ住宅とはエネルギー使用の合理化がされていて、耐震性があり高齢者等に配慮された構造と設備をもつ住居のことです。

 

(2)暦年贈与と併用できる

 
年間の非課税枠が110万円の暦年贈与と併用すれば、単年で最大3,110万円の贈与を無税にできます。

 

(3)相続開始前3年以内の贈与加算がなくなる

 
通常の生前贈与の場合、相続開始前3年以内のものは相続財産として戻し入れるという決まりがありますが、住宅取得資金贈与についてはありません。

 

注意点

同制度によって、住宅を新築・取得してしまうと小規模宅地等の特例を受けられなくなります

小規模宅地等の特例とは、自宅の評価額を330㎡まで8割減にできるお得な制度です。
 

相続時に小規模宅地等の特例を使用した場合と、どちらが節税になるかは慎重に判断すべきです。

 

まとめ

おしどり贈与同様に住宅取得等資金の贈与も、利用にあたっては十分な検討が必要です。

節税となるかどうかについて、専門家に相談した上で決めましょう。

 


 

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この記事を書いた人

大学卒業後、不動産会社で4年ほど実務を経験。
その後、会計事務所に勤務しながら税理士資格を取得し、不動産業界での経験を活かして不動産会社や不動産投資家の税務サポートに従事。